JADT006A March 2026 – March 2026 MSPM0G5187
•ニューラル プロセッシング ユニット (NPU) を内蔵した TI のマイコン (MCU) は、エッジ AI にハードウェア アクセラレーションを実現するため、消費電力に制約がありコスト重視のアプリケーションで、リアルタイムのセンサ データ処理を行うための高度なニューラル ネットワーク モデルを導入するのに役立ちます。
• マイコンで機械学習推論を実行すると、起動ワード検出、身振り認識、予知保全などの高度な機能を実現できます。
今日の汎用マイコン、特に TI の TinyEngine™ NPU のような AI ハードウェア アクセラレータを内蔵したマイコンを使用すると、消費電力、サイズ、コストの制約のバランスを維持すると同時に、システムの応答性を向上させる必要がある製品で、洗練されたモデルを実行することができます。
これらの機能豊富なデバイスを採用すると、エンジニアはリモート サーバーに対する継続的なクラウド接続を使用せずに AI 機能を実装し、多様なアプリケーションで、よりスマートで高速、かつ信頼性の高いユーザー体験を実現することができます。
この記事では、MSPM0G5187 などの Arm® Cortex®-M0+ ベースのマイコンに AI モデルを導入する方法についてのいくつかの例を紹介します。各例では、検出と信号処理チェーン、AI モデルが組込み環境にどのように調和するのか、そしてマイコンが各設計にもたらす性能とシステム レベルの利点について説明しています。
スマート スピーカ (図 1) とハブでは、AI モデルが音声認識を機能させて、ユーザーの要求に応じて起動をかけます。
図 1 音声認識機能を搭載したスマート スピーカユーザーの音声は、測定可能な音圧として処理される音波を生成します。AI モデルは、応答する前にそれをキャプチャして処理する必要があります。図 2 は、システム内のデータの形式とフローを示すブロック図です。
図 2 音声認識アプリケーション向けの信号チェーンのブロック図この信号チェーンでは、マイクなどのアナログ センサにより生の波形がキャプチャされた後、アナログ フロントエンド デバイスに渡されて、信号振幅の改善、ノイズの除去、データのデジタル形式へのエンコードが行われます。マイコンは、オーディオ向けの I2S などの通信プロトコルを介してデータを受信し、オンチップのニューラル ネットワーク モデルを使用してデータを解釈して、特定のキーワードが話されているかどうかを判定します。話されている場合は有効なウェークアップ状態を認識し、システム内のより強力なプロセッサがオンラインになり、要求されたタスクに対してヘビーデューティーの計算を実行するか、ユーザー プロンプトをクラウドベースの AI モデルにワイヤレスで委任します。
音声対応製品では、速度とパフォーマンスの精度が優先されます。応答性の高いシステムでは、最初の試行でユーザーの要求を取得できるので、コマンドを繰り返す必要性や過剰な待機時間が軽減されます。デバイスは、ウェークアップ コマンドを継続的に聴取し、音声データを迅速に処理する必要があります。この機能には、低レイテンシとローパワー性能が必要です。
マイコンは、消費電力がわずか数十 mW で、音声認識アプリケーションの電力要件を満たします。これは、大量の電力を消費する音声プロセッサ集積回路 (IC) に比べて 100 分の 1 程度になります。レイテンシの点で言えば、1 次元畳み込みニューラル ネットワークを使用する AI キーワード認識モデルでは、標準 CPU のみのマイコンで動作する同じモデルに比べて、NPU で処理時間を 90 倍以上短縮できます。
スマート リングやスマート ウォッチなどのウェアラブル パーソナル エレクトロニクス (図 3) では、手や身体の動きを追跡するセンサによってタッチフリーの身振り認識が実現しています。同じセンサで、健康状態や行動のデータを記録して、フィットネスや睡眠、ストレス レベルに関する知見を判断することもできます。
図 3 生体データを表示するウェアラブル フィットネス トラッカー信号チェーンのブロック図、図 4 に、AI モデルが身振りを測定して分析する方法を示します。加速度計やジャイロスコープなどのアナログ センサは、人間の動きや向きをキャプチャします。その後、信号チェーンに信号を通過させて前処理と測定を行います。マイコンはデータを受け取って AI モデルを実行し、不意の手首フリックのような特定の身振りを認識します。同じ概念は、心拍数、洞調律、睡眠パターンなどの他のタイプのデータにも適用されます。システム設計には適切なセンサが必要です。
図 4 身振り認識ウェアラブル アプリケーション向けの信号チェーンのブロック図ウェアラブル ヘルス トラッカーの設計者は、身振りを正確かつ迅速に認識できる機能を備えながら、日常的な着用に適した小型で軽量のソリューションの開発を目指しています。マイコンは、効率的なコンピューティング能力と高集積のアナログ / デジタル ペリフェラルを超小型の IC のフットプリントに搭載し、プリント基板 (PCB) 上のわずか数平方 mm を占有することにより、こうした技術的要件に対応できます。この設計アプローチを採用すると、従来のディスクリート部品を使用した設計より小型の設計を実現できます。こうした傾向は、一般的には同じサイズを維持しながら継続的に機能を追加している最新のスマート アクセサリからも明らかです。
コンベヤ、ポンプ、アクチュエータなど、産業用モーター (図 5) 内で機械的に可動する部品は時間の経過とともに故障し、望ましくない中断につながる可能性があります。ローカル AI モデルはモーター信号を監視し、小さなパルス状のスパイクや不規則な周期現象などの時間ドメインの異常を検出できます。このような異常は、モーター機能を直ちに停止することはありませんが、差し迫った故障を示唆しています。
図 5 産業用モーター図 6 に、電気的波形を測定し、AI モデルへのよりクリーンな入力を目的としたデータ前処理タスクを実行するための信号チェーンを示します。このアプリケーション内のマイコンは、モーター故障分析のための AI モデルを使用し、異常を早期に検出するとともに、システムまたはそのオペレータに警告します。
図 6 産業用モーターでの機械的振動監視に適した信号チェーンのブロック図多くの場合、人間はこのような環境に存在しているので、機械の故障は、安全性を確保するために予測可能かつ予防可能である必要もあります。エッジ AI 対応マイコンは、重要なモーター信号における故障の兆候を直接監視するのに役立つ AI モデルを導入することで、そのような環境で多用途性を実現します。これらのモデルは、データ内のパターンを特定して決定的な介入を行うことに長けており、モーター システムにおいて強力なツールとして機能します。
MSPM0G5187 のようなエッジ AI アクセラレーションを採用した Arm Cortex ベースのマイコンで特に魅力的なのは、汎用アプリケーションでの多用途性です。エレクトロニクスはほぼ無数の種類が存在しており、設計者が ローパワーで低レイテンシの AI 機能を導入するための斬新な方法を見つけることができます。マイコン メーカーの目標は、これらの高度な機能を継続的に統合しながら、使いやすい開発リソースとスケーラブルなプラットフォームを導入することです。
TinyEngine™ および CCStudio™ はテキサス インスツルメンツの商標です。
Arm® および Cortex® は、ARM Limited の登録商標です。