[テキサス・インスツルメンツのベル音] こんにちは。 テキサス・インスツルメンツ、TIのHal Edwardsです。 Understanding Power Densityシリーズのうち、このビデオのトピックは、 スイッチング損失の低減を取り扱います。 マイクロエレクトロニクスが誕生したのは、ゲルマニウム・ トランジスタが1948年にベル研究所で考案されたときです。その後、 最初の商用シリコン・トランジスタを テキサス・インスツルメンツが1954年に紹介し、 TIのジャック・キルビーが集積回路を発明したのは1958年です。 この功績が評価され、キルビーはノーベル物理学賞を 2000年に授与されました。 マイクロチップ・テクノロジー分野で非常によく知られているトレンドは ムーアの法則です。これは、デジタル・トランジスタ の封止密度は世代ごとに上昇する、というものです。 このトレンドに伴い、複雑性は上昇してきました。 高集積マイクロチップを製造するために、 先進的な製造機器を使用して、直径300mmのシリコン・ウェハーに 回路を形成するのが一般的です。 ただし、デジタル回路のスケール化と並行して、アナログと電源の 半導体のテクノロジーも、それぞれ独自の方向で進化を続けてきました。 最新のエレクトロニクス・システム が求めているのは、よりコンパクト、より効率的、よりコスト効果の高い パワー・マネージメント・ソリューションであり、集積化のトレンドは デジタル分野で始まった後、パワー・トランジスタ・テクノロジー分野でも そのトレンドが波及しています。 TIは長い歴史を通じてマイクロチップ・テクノロジーに 取り込んでいるほか、豊富な背景をディスクリート・パワー・ トランジスタ分野でも開発と製造に生かして 統合型の電源テクノロジーに携わっています。その結果、 電力密度のスケール化が、高効率、高性能、さらにコンパクトな パワー・マネージメント・ソリューションで求められている状況に対応できています。 パワー半導体としてのマイクロチップが実行する機能は、 デジタル・マイクロチップとは根本的に異なっています。 産業革命との類似性について考慮すると、 それぞれの独自要素を手掛かりとして、 互いに競合関係にある各種電力半導体 テクノロジーを検討するのに役立ちます。特に、性能指標FoMは 数値形式で特定のパワー半導体テクノロジーの 競争力を表現する目的で使用できます。 産業革命初期の蒸気エンジンは大気圧で動作し、 鉱山から水を除去するための吸引力を生成しました。 その後、James Watt氏がそのエンジンの効率を 大幅に改善しましたが、それまでは蒸気エンジンの用途は限定的でした。 事実、James Watt氏は 「horsepower」、つまり馬力という新しい用語を考案し、顧客に対して 効率の持つ意味と、投資するだけの価値があることを説明する必要がありました。 今でも使われている馬力という単位は、 テクノロジーの出力に関連する最初の性能指標でした。 一方、パワー半導体はこれとは異なる独自の性能指標を 使用します。このビデオで後ほど説明します。 蒸気エンジンの改良が進むにつれて、小型化が可能になり、 より高い気圧で動作させることが可能になりました。 蒸気機関車を製作することも可能になりました。 蒸気エンジンの設計で出力密度が向上した結果、 鉄道輸送を実現できました。 同様に、電力密度の向上 に伴って、パワー半導体のマイクロチップは 新しいアプリケーションへの採用や、 既存アプリケーションの改良につながりました。 産業革命の学習曲線を変化させた 原動力が蒸気エンジンの改良だったのと同様、 半導体エレクトロニクスの進歩の 原動力となったのはパワー・トランジスタの改良でした。 どのような種類の改良が求められているのか理解するには、 パワー・トランジスタの回路内での使用方法を 理解する必要があります。 DC/DCコンバータの役割は、 電力を効率的に処理し、 バッテリのような供給元から受け入れた電力を、 マイクロプロセッサのような負荷に供給することです。 このような回路の課題は、 カメラのフラッシュが使用するバッテリを連想すると、理解しやすくなります。 それぞれが1.5Vを供給する単三電池を2本 直列接続して、LEDライトに電力を供給するとします。 このLEDは3Vを必要とします。 ところで、供給する電圧を下げる回路を製作するとしたら、どうしますか? ここでは、電圧を上げることを考慮しません。 この状況で、DC/DCコンバータが役割を演じることになります。 降圧コンバータはDC/DCコンバータの1形態であり、 2個のパワー・トランジスタを搭載しています。これらをハイサイドおよびローサイドと呼びます。 これらは電流の流れるパスを順に切り替え、 これら2個のパワー・トランジスタの間で電流を流します。 これらのトランジスタは、共有する端子に接続されています。 この端子をスイッチ・ノードと呼びます。この端子は出力ローパス LCRフィルタに接続されており、このフィルタは電圧波形の平均化を実施して、 スイッチ・ノードに渡します。 これらの動作を通じて、負荷への電力は、 出力電圧Voutで供給されます。これは、Vinを下回る値です。 エネルギー蓄積用のインダクタとコンデンサは十分大きく、 瞬間的な電流サージを負荷に供給することができると同時に、 Voutを許容可能な範囲内に維持することができます。 Vinに対するVoutの電圧比は、 時間の比率という形で設定できます。 この比率に合わせて、ハイサイドのパワー・トランジスタをオンにします。 多くの場合、降圧コンバータのDC/DC変換効率は 90%を上回ります。 決して100%に達することはありません。複数のパワー・トランジスタが、 処理しようとしている電力の一部を消費するからです。 パワー・トランジスタが導通状態になっているとき、 各パワー・トランジスタのオン抵抗RDS(on)は 導通損失を発生させます。これが主な損失 メカニズムになるのは、大電流を負荷に供給している場合です。 パワー・トランジスタはスイッチング、つまり高速でオンとオフを切り替えられ、 電流のパスを一方のトランジスタからもう一方へと交互に入れ替えます。 そのたびに、各トランジスタのゲート容量とドレイン容量の 充電と放電を実施する必要が生じます。 この充電エネルギーは、スイッチング・サイクルごとに供給する必要がありますが、 一般的に回復は不可能であり、捨てることになります。 その結果、スイッチング損失につながり、電力変換効率が低下します。 この損失の大きさは、スイッチング周波数に比例します。 この結果、スイッチング損失が降圧コンバータの変換の支配的な要因になるのは、 高速なスイッチング周波数を使用している場合、 または導通損失が小さく、電流も小さい場合です。 もう1つのスイッチング損失項は、物理的な性質に起因します。 ダイオードとインダクタの性質です。 1回のスイッチング・サイクルごとに、デッドタイムという期間が発生します。 これは、どちらのパワー・トランジスタもオンになっていない期間です。 インダクタは 磁気性のバッテリと解釈することもできます。この素子は、自らの電流の 流れを一定に保って自らの磁気エネルギーを維持することを試みます。 その結果、電流を ローサイド・パワー・トランジスタのドレインから引き出すことになります。 この動作に伴い、電子とホールつまり正孔を、 パワー・トランジスタの半導体領域に注入する結果になります。 デッドタイムが終了した後、ハイサイドのパワー・トランジスタは オンになり始め、同時にローサイドのパワー・トランジスタの ドレインは順方向バイアスを失ってブロッキング、つまりオフの状態に向かいます。 この時点で、電子とホールを 半導体の中性領域から取り除く必要が生じます。 この結果、電流パルスが生じますが、 その蓄積が合計電荷QRRになります。 ゲートとドレインの間の電荷が失われるのと同様、 これらの逆回復損失もスイッチング・サイクルごとに発生します。 1個のDC/DCコンバータは1個のパワー・トランジスタを必要とします。 その目的は、最大電圧に耐えるため、および効率的に 最大電流を流すためです。この電流は、選択したパワー・ トランジスタのオン抵抗RDS(on)を駆動し、このアプリケーションを実現します。 性能指標は特性オン抵抗R(SP)であり、mΩ単位のRDS(on)と 平方mm単位のパワー・トランジスタの面積との積で表現します。 その結果、R(SP)はパワー・トランジスタのサイズを 特定のアプリケーションに対して設定することになります。 TIは数十年にわたる経験をシリコン集積型パワー・ トランジスタと300mmウェハー使用のアナログ 製造能力の分野で積んできたので、パワー・トランジスタで 業界をリードする低R(SP)を実現できています。 パワー・トランジスタの詳細に注目すると、 ドレインのうちゲートの近くにある境界付近の先端領域を ドリフト領域と呼びます。 このドリフト領域は、トランジスタがオン状態のときに電流を流し、 RDS(on)を決定する役割を果たします。対照的に、 ブロッキング状態では電子が枯渇状態になり、 このトランジスタを使用できる最大電圧を決定する役割を果たします。 集積製品を およそ120V以下で動作させる場合、ラテラルつまり横型のパワー・トランジスタ構造 を使用するのが一般的であり、この構造を図に示します。 電圧がより高い場合、半導体の材質自体が、 このテクノロジーに制限を加えることになります。 先進的なワイド・バンドギャップ半導体である 窒化ガリウムGaNなどは、シリコンの場合の1/10の距離で 高電圧を低下させることができます。 TIのGaN製品ファミリは この能力を活用しています。 パワー・トランジスタ内で、電流は ドレインとソースの間を流れます。これを制御するのは、 ゲートへの印加電圧です。 ドレインの周辺にあるアンチドリフト層は、ソース側より厚くなっています。 ドレインは、より高い電圧に接続する必要があるからです。 これは、ゲートやソースが耐えることのできる電圧より高い値です。 ゲートとドレインのそれぞれに静電容量が存在しており、 この静電容量の充電と放電を実施する必要が生じます。 スイッチング・サイクルごとに、です。 このアプリケーションで使用するRDS(on)は選定済みなので、 RDS(on)と電荷の積、つまり ゲートまたはドレインに蓄積されている電荷は、 このテクノロジーの性能指標を表します。 TIは300mmウェハーを使用するアナログ製造能力を通じて、 業界をリードする性能指標QR (電荷と抵抗の積) を実現しています。 その土台にあるのは、非常に小型かつ適切な制御を実現した パワー・トランジスタの製造能力です。 スイッチングのデッドタイムの間、 ドレインとトランジスタの筐体の間に形成されているボディ・ダイオードは 降圧コンバータの電流を流す役割を果たします。 この状態で、半導体に大量に流れ込むのは、 少数キャリアである電子とホールです。 デッドタイムの終了後、ドレイン電圧は上昇し、 これらのキャリアは接合部へ向かって拡散し、 一掃されます。この過程で形成されるのが、逆回復電流の パルスです。 この逆回復電荷QRRは、 エネルギー損失のメカニズムを表す大きさであり、 このことを必ず考慮に入れたうえで、パワー・トランジスタのモデル化と DC/DCコンバータ回路の設計を実施する必要があります。 窒化ガリウムGaNは、シリコンとは 種類の異なる半導体です。 具体的には、GaN製品は実際のところ、 逆回復損失が発生しません。 オーバーラップ損失という用語が指す状況は、 電流がトランジスタ経由で流れており、 同時に、ドレイン電圧が高い状態のことです。この場合、 電圧と電流の積で計算できる消費電力は かなり大きい値に達する可能性があります。 DC/DCコンバータ設計時の1つの課題は、 大電流が急激にスイッチングされることです。 電流が流れるパス間でこの現象が発生し、その結果、寄生インダクタの 充電と放電が生じて蓄積済みの磁気エネルギーが急激に出入りします。 この現象は、さまざまな電圧端子でのリンギングをもたらします。 このリンギング・エネルギーは消費されますが、 その結果、オーバーラップ損失が発生します。 また、リンギングの結果、パワー・トランジスタで電圧ストレスが 発生し、トランジスタの破損または劣化につながる可能性があります。 任意のトランジスタが許容動作条件を上回って ブレークダウン状態に陥るような動作は推奨されませんが、 一般的な希望として、パワー・トランジスタは 瞬間的なブレークダウン状態に耐えることが望ましいと考えられます。 この性質を、耐久性または堅牢性と呼びます。 テキサス・インスツルメンツは幅広い経験を ディスクリート・シリコン・パワー・トランジスタの分野で積んできたので、 開発分野で革新を実現し、業界をリードする集積型 シリコン・パワー・トランジスタも製造し、 最適な組み合わせとして、低R(SP)、性能指標QRの低減、 堅牢性を同時に達成しました。その結果製造できた製品は、 業界をリードするダイ・サイズ、効率、耐久性を達成しています。 シリコン・パワー・トランジスタの改良による 電力密度への影響を示すために、 複数のDC/DCコンバータを比較します。一方は以前のプロセス・ ノード使用製品、もう一方は現在のプロセス・ノード使用製品です。 どちらのDC/DCコンバータも、93.5%のピーク効率を達成しています。 ただし、より新しいパワー・トランジスタはR(SP)を低減しているので、 よりコンパクトなシリコン・ダイ・サイズを達成しています。 この結果、かなり小さいパッケージ・サイズを実現できます。 より新しいパワー・トランジスタは、性能指標QRを低減しているので、 二重の効用でスイッチング周波数が上昇するほか、 負荷の動作と対比したときに、非常に近い効率を同時に維持して います。 また、スイッチング周波数が上昇すると、 より小型で、よりコスト効率の優れたエネルギー・ ストレージ・インダクタを使用できるので、システム・サイズの大幅な削減が可能になり、 電力密度の向上を ソリューション全体で達成できます。 このビデオは、パワー半導体テクノロジーを取り扱いました。 特に、パワー・トランジスタをDC/DCコンバータの 一部として使用する方法を説明しました。 また、導通損失を定義しました。これは、パワー・トランジスタが オン状態の時の抵抗に起因します。続くスイッチング損失は、 ゲートとドレインの充電と放電に起因するもの、 およびドレイン・ダイオードの逆回復に起因するものです。 パワー半導体の性能指標についても定義しました。 R(SP)を低減すると、ダイ・サイズを小型化できます。 QRの小さい製品は、より高速なスイッチング周波数を使用できます。 製品のスイッチング損失が小さいからです。 お時間をとってご覧いただき、ありがとうございました。 皆様が引き続きパワー・エレクトロニクスの分野で 成功を遂げられることを願っています。